【小倉】在宅医療介護従事者研修会を開催しました

酷暑厳しい8月6日(木)小倉センターでは、令和8年度第1回在宅医療介護従事者研修会を開催しました。今回は、2026年度診療報酬改定で話題を集めている「腎不全」に注目しました。

透析患者の“これから”を共に描く― 多職種で支える意思決定と問題解決 ―

             講師 ;医療法人真鶴会小倉第一病院 理事長・院長 中村 秀敏先生

オープニングは、中村先生の「この講演依頼が来た時に『正直、断ろうか』と悩んだほど、難しいテーマだなと思った。」からはじまりました。

一方で、北九州市内で透析治療を行っている医療機関の中で  小倉第一病院は歴史からみても長い取り組みがあることや、今年度の診療報酬改定でも末期の腎不全患者に対する緩和ケアに評価が加わったことに触れながら、先生が演壇に立ちお話しされることは  ご自身の役目だと語られました。

講演では、透析医療の現在地、意思決定支援の本質、そして治療の終わりをどう支えるかという現場で直面する課題へ進んでいきました。

先生お薦めの書籍「透析を止めた日」講談社   (著者:堀川 恵子 氏)を軸に、社会に与えられた変化・変革についてわかりやすく解説いただきました。

腎不全患者にも緩和ケアを認める制度変更:2026年診療報酬改定~終末期腎不全患者も緩和ケアや在宅医療の対象へ追加~

透析医療界に「治療の終了」を議論させた:“開始と継続”だけでなく、“限界に達した治療をどう終えるか”を問い直す

透析施設の経営構造と診療報酬の問題を可視化:評価の差 “透析治療(高い評価)”“支えるケア(低い評価)”~在宅医療にも報酬を~

看護師や患者家族が抱えていた沈黙を言語化:同じ経験を語る“見送る側の苦しみ”“罪悪感”を社会が共有

「透析中止=安楽死」という短絡を崩した:限界を超えた後は「止めること」ではなく、苦痛の緩和とその人らしい最期を支える医療が必要

これらは、透析医療がこれまで抱えてきた“語られにくい現実”を社会に開き、患者さんの人生に寄り添う医療のあり方を問いただす契機となりました。

 

『透析医療は「続ける仕組み」は整っている、しかし「終わりを支える仕組み」はまだ十分ではない。』という先生の言葉が印象に残ったという参加者の声も多くありました。

透析は、医療機関・診療報酬・設備・人員など、治療を続けるための仕組みは 非常に整っている一方で、

  *透析をやめたいと言われたとき

  *体力が限界に近づいたとき

  *合併症で通院が難しくなったとき

  *最期をどう迎えたいか話し合うとき

こうした“治療の終わり”に関する支援体制は、まだ十分ではないという現実があります。

このギャップが、患者・家族・医療者の苦悩を生み、「どう支えるべきか」という問いを地域に投げかけています。

さらに、透析患者さんの意思決定は、病状や生活の変化に合わせて何度でも見直す必要があるとお話しされ、

  *腎機能が低下したとき

  *透析導入を考えるとき

  *合併症や生活の変化が起きたとき

  *終末期を迎えるとき

その都度、「何を大切にしたいか」「どこで過ごしたいか」「どんな治療を望むか」を丁寧に確認し、共有することが求められるとのことでした。

「最善の医療ではなく、“その人にとっての最善”を目指すことが大切」と先生は強調されていました。

そのためにも、多職種で支える意思決定支援の役割は大変重要なものと言えます。

意思決定支援は、医師だけでは完結しません。資料でも医師、看護師、ケアマネ、訪問看護、介護職、家族など、“多職種がそれぞれの役割を発揮して意思決定を支える構造”が示されました。(「腎不全患者のための緩和ケアガイダンス」)

一人の力でなく、チームで支えることが新しい課題であり、可能性であることを皆さんが感じられたのではないでしょうか。

 

そして・・・

後半では、透析だけが選択肢ではなく、CKM(保存的腎臓療法)という“その人らしい生活を支える治療方針”も紹介されました。

CKMは、透析や腎移植を行わず、薬や生活の工夫で、体調を整えながら、自分らしい生活を支える治療方針です。

 CKMを決めるプロセス

①情報を共有する(透析・移植・CKMのメリット/負担を説明)

②本人の思いを確認する(大切にしたいこと、避けたいこと、どう過ごしたいか)

③みんなで話し合う(本人・家族・医療者で一緒に考え理解を深める)

④方針を決める(納得できる方針を決め、定期的に見直す)

患者さんにとって、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)👉SDM(共同意思決定)👉その結果としての「透析選択」「CKM選択」“選べる医療のかたち”があることが大切になります。

このプロセスを多職種のチームで支えることで、実際に「透析は死んでもいや!死んだほうがまし!」と言っていた患者さんが、 関わりの中で情報や思いを整理し、透析を受ける選択をされ「こんなものだとは思ってなかった」と笑顔を見せたケースもあると紹介を受け、参加者の心に深く残ったようでした。

療養場所や治療方針に関する選択肢(透析通院しながら在宅で過ごす、必要時入院、透析内容の調整、PD(腹膜透析)への変更、透析+緩和ケアの併用…など)を、患者さんが具体的に知りながら一緒に考えていくことができれば、在宅で最期まで過ごす選択も可能です。高齢化で自力でのPDが難しくなった方を支える仕組み:Assisted PD(支援付き腹膜透析)についても  現在の課題と併せて解説していただき、日本の超高齢社会で  今後ますます重要性が高まることに 皆さんも頷きながら聞き入っておられました。地域での支援体制の必要性について考え、整えていく動きにつなげなければなりません。

 

講演の締めくくりとして  先生より「そもそも透析にならないように、早期の受診を!」とのお話がありました。

腎臓病は早期発見・早期介入が何より重要であり、地域での啓発や連携が欠かせません。

健診、生活習慣の支援、糖尿病・高血圧などの管理…“透析にならない未来”をつくる取り組みを    同時に進めていく必要があると改めて感じました。

患者さんの正しい知識の獲得と、不安に寄り添うための、小倉第一病院オリジナル「腎臓病はじめてガイド」もご紹介いただきました。

マスコットキャラクター  ハッピーちゃんが伴走しながらの やさしくわかりやすいガイドブックです。

患者さんの人生に寄り添い、その人らしい選択を共に描くための視点と実践を再確認する貴重な研修会となりました。

 

  研修会アンケート結果は👉👉👉こちら✨